「マツケンが黒崎に来るらしいよ。」そんな話を聞いて、思わず笑ってしまった。

全国的なスターが黒崎の商店街を歩く。少し前なら想像もしなかった光景かもしれない。でも、なぜだろう。驚きより先に、「なんだか黒崎らしいな」と思った。黒崎というまちは昔から不思議な場所だ。初めて訪れた人は、駅前の大きさや商店街の長さに驚く。けれど、このまちの本当の魅力は建物や施設ではない。

人だ。

昔から黒崎には、人を受け入れる空気がある。初めてのお店なのに常連のように話しかけられたり、イベントに行けば知らない人同士が自然と会話していたりする。人と人との距離が近い。それは地方都市の温かさとも少し違う。挑戦する人を応援する文化が、このまちにはある。

だから最近の黒崎は面白い。

若い店主が新しい店を始める。高校生や大学生がまちづくりに関わる。昔から黒崎を支えてきた人たちが、その背中を押している。今回発表された「クロサキスイッチ2026」のテーマは、多世代交流。若者のエネルギーとシニアの情熱を掛け合わせるという。まさに今の黒崎そのものだと思った。

若い世代だけではまちは続かない。経験豊富な世代だけでも未来は生まれない。その両方が交わることで、新しい景色が生まれる。

だから今回の主役は、松平健さんだけではない。サンバ隊として参加する子どもたちかもしれない。沿道で手を振るおじいちゃんやおばあちゃんかもしれない。久しぶりに黒崎を訪れる人かもしれない。あるいは、何気なく商店街を歩いているあなたかもしれない。

イベントは一日で終わる。でも、人の心に入った「スイッチ」は残る。誰かと話したくなる。また来たくなる。このまちで何か始めたくなる。そんな小さな気持ちの積み重ねが、まちの未来をつくっていく。

最近、北九州は少しずつ変わっている。

移住者が増えた。若者の挑戦が増えた。面白い人たちが集まり始めた。その変化の真ん中に、黒崎というまちがいる気がする。マツケンが来るから行く。もちろん、それもいい。でもその日、もし少しだけ時間があったら、商店街を歩いてみてほしい。お気に入りの店を見つけるかもしれない。誰かと話すかもしれない。

黒崎というまちの面白さに気づくかもしれない。

そして帰る頃には、あなたの中にも何かのスイッチが入っているはずだ。

秋の黒崎は、そんな予感に満ちている。