Z世代課の誕生や、若い世代を中心に移住者も増え、ますます活気づいている北九州
そんな北九州の副都心、黒崎を拠点に、コミュニティFMラジオ局「AIR STATION HIBIKI(エアステーションひびき:愛称_エフエムひびき)」を運営、地元の史跡「曲里の松並木」の清掃活動、黒崎宿場夜市の運営など、行きたくなる住みたくなる街の魅力を発信し続ける武智充(たけちあたる)さん。編集長サタがその活動に迫ります!
北九州は近年、ものづくりに関わる人たちや、地方創生の波に乗って新たなプロジェクトに挑戦する若い世代が増えていて、街全体がワクワクするエネルギーで溢れています。そんな北九州の副都心、黒崎を盛り上げているキーパーソン、今回の主役・武智さん!彼のこれまでの活動や思いを、一緒に覗いてみましょう!
武智 充(たけちあたる)さん
DJポーズに笑顔が光る、実は黒崎界隈で知らない人はいないくらい有名なコミュニティづくりの達人。
生まれも育ちも北九州の副都心、黒崎。地域を盛り上げるミスターコミュニティづくり。その原点でもあるコミュニティFMというラジオ局を経営しています。
北九州の人があまり地元のこと知らないことに疑問を感じ、北九州に特化した、地域の情報を届けるラジオ局を作ったり、黒崎商店街でアイドルグループを仕掛けたり、合唱部で街を盛り上げたり、長崎街道「曲里の松並木」をライトアップするイベントで人を巻き込んだり、とにかく北九州の副都心、黒崎を面白くしたい…
地元愛で動きまくっている人!
行きたくなる住みたくなる街には、絶対に面白い人がいるはず!
DJとして、経営者として、黒崎の街で走り続けてきた武智さんは、今の自分をどう見ているのでしょうか?北九州市若松区の学研都市ひびきのにある「エアステーションひびき」で、話を聞きました。
話を聞いたひと:武智 充(たけちあたる)さん 1971年北九州生まれ。北九州市立大学マネジメント研究科卒業。黒崎ミニFMを経て2009年にFM88.2 コミュニティFMラジオ放送局. AIR STATION HIBIKI(エアステーションひびき)北九州発「ひとと、人を結ぶラジオ局」を設立。2019年にチーム松並木設立。2020年に黒崎宿場夜市を始動するなど、近年ではまちづくり・ひとづくりといった領域で活動している。
https://hibiki882.jp/
動き出したら止まらない
編集長サタ(S):コンクリートの壁にガラス張りのデザイン、 カッコいいラジオ局だぁ…、開局されてどのくらい経つのですか
武智さん(T):2009年の立ち上げなので、今年で15年になりますね
S:すごい!まだ、SNSとか今ほど普及してない頃ですね
T:ちょうどfacebook(2008年5月19日には日本語でのサービスが開始)が始まって間もない頃ぐらいかな。ラジオって、若い方だと古いメディアって感じなのですかね
S:インターネットでもラジオが楽しめるので、結構周りも聴いていますね。動画に目も耳も手も取られるより、耳で楽しみながら、目と手で何かをしていたりすることが増えています
T:目と手で何かを…笑、そうですね、声だけって良いですよね
S:ラジオ局を立ち上げたきっかけ
T: 2001年の北九州博覧祭の中に、コミュニティ事務局といって、地元の情報を発信するラジオ局ができて、その時にボランティアをしました
S: ボランティアが始まりなんですねー
言葉で地域と繋がる、広がる共感の場づくり
T: その経験から、地域の情報が届くラジオがあったら良いなぁ、“言葉の力”で地域と繋がる、共感や興味が広がる“場づくり”がしてみたいって考えるように
S: “言葉の力”と“場づくり”かぁ…
T: ちょうどその頃、北九州に限らず、地元の人は地元を知らないって感じて感じることが多くて。しかも、良く言わない人も多いですね、「ガラが悪い」「怖い」なんて笑
S:私だと地元の八幡東区は多少知っていても、他の地域はあまり知らない。北九州に興味を持って、行こう住もうを始めた頃、今思えば、そういう想いがありましたね。
T: もっと地元を知って好きになる、そんな思いでミニFMを始めました。コミュニティFM局がどういうものか、知ってもらうために、黒崎の商店街にラジオ局をつくりました
S:行動が早い!どのくらいやっていたんですか
T: 2009年の開局まで8年かな。毎週、週末だけ集まって、博覧祭のラジオメンバーを中心に、みんな本業がある人たちで当時はラジオ一色!皆で熱狂していましたね
S:私が4歳の頃からラジオに関っているって凄っ、23年間!
T: あ、ラジオのキャリアと同じ年ぐらいだ
S:それでは、エアステーションひびきの活動について聞かせてください
持ちつ持たれつ、ひとりじゃない
T:イベント情報やお店の紹介、歴史に関する特集などがメインで、地元の人が「自分のことだ」と感じることがモットー。活発な情報の共有、特に災害時などの緊急情報は迅速に届けたい
S:ラジオの声が、リアルなコミュニティの場をつくるんですね
T:SNSは便利ですが、目と指で追う情報が一瞬で流れたり、必要な情報に限って見つけにくい。その点、ラジオは耳だけなので、情報がダイレクトに届く。地域の声をそのまま届けるという意味で、ラジオには独自の価値があると感じます
S:ゼロからラジオ局を立ち上げるって大変そう、、、
T:思い立ったら即行動タイプですが、いざ、個人でラジオ局の立ち上げとなると。機材にスタジオ、お金は出ていくばかり。営業で何軒も回り、話を聞いてもらいながら、地域の企業や個人の方の協力を得て、なんとか資金をかき集めました
S:個人でラジオ局を立ち上げる、なかなか理解されにくいですよね
T:人の確保も手探りで、当時、技術者や放送スタッフなど、専門的なスキルを持った人が少なくて、一から育成しないとダメでした。放送技術について学ぶワークショップを開いたり、ボランティアを募ったりしながら、少しずつ人を増やしていったなぁ
S:情報も今より少ない中、教育まで、、、
T:いよいよ立ち上げるそ!ってときに、かなり重めの機材トラブルが発生、放送が開始できるかどうか、ギリギリのタイミング、駄目かなって一瞬折れそうに…そんな時に、今までお世話になった、地元の皆さんが徹夜で手伝ってくれて、どうにかギリギリ…無事に開局できましたね
S:地元のひとと誕生したラジオ局なんですね
T:教訓:困っている人がいたらなるべく助ける。それは、自分が困った時、助けてもらえるから笑
行動すれば未来が変わる
S:ラジオのこれからについての思いを聞かせてください
T:若いZ世代の皆さんがどんどん参加して、自分たちの声を発信する場にしてほしい。地元アーティストやクリエイターのコラボレーションも計画中。地域課題などの議論の場づくりをしていきたい
S:行動する場を提供することで、地元が活性化しますね
T:そうですね。「行動が未来を変える」という信念は、常に持ち続けています。小さな行動でも、それが積み重なれば必ず大きな変化につながると信じていて、エアステーションひびきを通じて伝えていきたい!
S:これまでの経験がコミュニティづくりに繋がっていくんですね
ノリでゼロからイチをつくってみる
S:そんなコミュニティの中から「クロサキ48プロジェクト」について
T:当時大人気のAKB48みたく「アイドルグループが、黒崎を盛り上げるって最高!」軽いノリから、結果、小学生から20代までの若い子たちが参加してくれて、商店街がダンスと歌で盛り上がりましたね
S:ノリって大切、若いエネルギーって素敵
T:丸パクリでもじって、黒崎を愛するアイドル爆誕!商店街に笑顔が溢れたとき、あぁ、ノリって良いなぁって
S:黒崎にアイドル、見たかったなぁ。
T:次に「黒崎 町の合唱部っていう合唱部」、イギリスの有名な指揮者が、戦地に行った旦那を心配する奥様を勇気づけるため、皆で歌って元気を出す話や、 天使にラブソングという映画に触れ、体1つでコストもかからない歌に可能性を感じて、定期的に黒崎の商店街に人が集まる場づくりをしました
さらに、地元の人がおすすめを紹介をする「マップ部」、だんだん活動も大きくなり、「まちづくりの学校みたいな組織をしませんか」と声がかかり、 今までの集大成みたく「タウンドシップスクール」が誕生したんです
S:すごい巻き込み力!ノリと勢いが大きなゼロイチに!
T:そのおかげで、商店街は人も増えて一時的に盛り上がるんだけど、北九州の人口減少は止まらない
S:社会問題ですね
T:もっと広い視野で考えないと、街のビジョンづくりと継続はほんとに大変
盛り上がるサイズの場づくり
S:史跡「曲里の松並木」の清掃活動にかける想いを教えてください
T:昔から黒崎のシンボルだった「曲里の松並木」が少し寂れてきたのを感じて、地元の誇りを取り戻そうと、毎月1回、第2日曜日の朝9時から掃除を始めました
S:商店街から、眠る観光資源のブランディングへシフトしていくんですね
T:最初は5〜6人だったかな、 商店街の理事長さんと私と、あと何人か。知り合いとか仲間で集まってやっていました。活動を通じて、コムシティ、ウェル戸畑、市民ボランティアステーションが協力してくれて、北九州市内の学生が、来てくれるようになって
S:ここでも発揮される、行動と巻き込み力
T:今まで商店街でやってきた活動で、黒崎の街が活性化「街にお金がたくさん落ちるようになった」「人で賑わうようになった」って正直思えなくて。合唱部のように、 街に人が来る企画を、大きくやりたいと思い、松並木をもっと素敵に、行きたくなる場所にしようと
福岡の大濠公園みたいな憩いの場にしたい、街に人が増えれば、お金も動くと考えて始めました
黒崎宿場夜市で街を鮮やかにアップデート
S:そこで誕生したのが「 黒崎宿場夜市」なんですね
T:はい!「和・宿場町・長崎街道」をテーマに観光スポット化、500mぐらいある松並木をライトアップ、装飾で華やかに夜市をしています。ここを起点に、和をテーマに黒崎をアップデートしたい
S:太宰府の参道あたり参考になりそうですね
T:そうみたいですよ。甘味や食事や雑貨店があって華やかで。隈研吾のスタバが集客したり、お酒も楽しめたり、すごく雰囲気が良くなりそう笑
S:四季折々の映えスポットですね
T:ゆくゆくは、黒崎を1つのテーマで街作りしたい。元々、宿場町だから全国的にみても、観光と相性が良い。工業都市化で、歴史的価値があるものは、ほぼ壊しちゃったみたいだけど
S:高度経済成長期の北九州の勢いは凄かったのでしょうね
T:三角公園の近くに、大衆演劇の黒崎新劇座ができたんだけど、劇団が来ると、ファンの方が多く訪れて、帰りに街で、飲んだり食べたりして帰るみたいです
S:行こうのキッカケがあれば、人って集まりますね
T:最近、北九州を盛り上げる一般社団法人北九州を立ち上げて、文化庁の委託事業で、歌舞伎の魅力を子供に伝えたり、日本舞踊にも関っているので、いつか、幻想的にライトアップされた松並木で歌舞伎が楽しめるようにしたい
S:すでに行動しているからすごい
人の話は聞くけど、聞かない
T:何かやる人は、誰よりも失敗した人だと思います。僕も今だに失敗ばっかり、本当
S:チェレンジした人にしか壁って現れないって言いますよね
T:行動すると、いろんな人からいろんなこと言われますから。
聞きすぎてもダメだし、聞かなすぎてもダメだから難しい。聞かなかったら、協力してもらえないし、聞きすぎると、やりたいことがブレる。そのちょうどいい塩梅を見つけないと大変
S:聞くけど、聞かないみたいな
T:もっと、若い人に知ってほしい、 志す人は何を言われても、しょうがない。社会で生きる限り、当たり前のこととして。1人じゃ何もできない、だって人の協力は不可欠でしょ
S:人は1人じゃ生きられない
T:耳が痛いことも言われるけど、若い時は、それでも良いと思う。きっと意味があるし、立ち向かうパワーになるし、なんか若いってだけであるでしょ、そういうの。で、寝たら次の日忘れているみたいな笑
S:すごく刺さります、経験は宝物ですね
同じ住むなら元気な街
S:どうしてそこまで北九州(黒崎)推しなのですか
T:盲目的に推しって訳ではなくて…居心地は確かに良い、知り合いばかりだし、どこに何があるとか。でも、それだけじゃダメで、生活が良くならないと楽しめない。住んでいる人が、良くしようと動いて、元気な感じこそ推しどころというか
S:そうですね、同じ住むなら元気な街が良いですね
T:良くしようって気持ちとは裏腹に、良くならない…だったら動きましょうよって
S:推すよりも盛り上げる!だからエネルギッシュに色々と取り組めるのですね
T:僕にとっての北九州の魅力は、工業都市ならではの労働者の人たちの感性“ちょっと柄が悪い”ところ笑。労働者の街らしいラフな感じが、逆に“かっこよさ”になっていると思う。それを大事にしつ、新しい価値を発信したい。街に漂うブルーな感じ、ホワイトカラーにはない特有のもの。ファッションでも音楽でも、あると思うのですよ。そういうカルチャーこそ、オリジナルだよね、北九州って。
S:分かるような気がします
T:若松にある高塔山のロックカルチャーだったり、街の暮らしに根付いている角打ちとか、焼き鳥とか、ラーメンとかそういう土着的で、意外と他エリアへのアピールポイントになるようなコンテンツも宝庫なんだよね
S:ですね、住めば都以上のコンテンツ多さ、政令指定都市の北九州は、都市機能はもちろん!山に川に海に、風光明媚な面も楽しめるから、子育て世代にもおすすめしたい!
止まらないコミュニティづくり
T:黒崎はまだまだ成長中の街。これからも、地元のみんなと楽しいことを創っていきたいので、気軽に遊びに来てください!
S:武智さんと出会うにはどこに行けば出会えますか
T:学研都市ひびきのにある「エアステーションひびき」かな、一緒に「曲里の松並木」を清掃してもらってもいいし、バーベキューでもいい。お酒飲んでも、飲まなくてもいいので笑。 ちょっと話して、いっしょに行動してみませんか
S:それこそ、Z世代課で話を聞いたとき、「活動したい、でも、どうしたらいいか分からない」っていう声も多いみたいなので、武智さんの活動を通して、何か始めてみよう!に繋がればいいなと思います
場をつくって、人がつながる。その仕組みを丁寧にデザインし、外からも内からも変わっていく。『ちょっと行こうかな、いや、住もうかな』とか、『あ、ここ気になる!』なんて心が動く、そんなことが実はすごく大切で、武智さんのコミュニティづくりには、カルチャーとデザインの確かな土台があって、ただ勢いに任せるのじゃなくて、細やかで、芯のあるものを感じます。
そんな行動が、この街をイキイキさせる原動力なんじゃないかなと感じました。