2024年4月、史上初「Z世代課」というセクションを立ち上げた北九州市。WebTVで一気にバズり、目にした方も多いのでは?ですが、報道を見ても「実際のところ何をどうする課なの?」についてはちょっとボンヤリ。じゃあ、思い切って聞いてみよう!ということで、Z世代の編集長サタとX世代副編集長で市役所を訪問、そのルーツを「Z世代課」柏木課長にいろいろと聞いてみました。

Z世代編集長が探る!世代を考えること ≒ 北九州を考えること? -後編-:記事はコチラ

よく聞かれると思いますが「Z世代課」って何をしているなんですか?

サタ(以下S) はじめまして。今回はどうぞ宜しくお願い申し上げます。

柏木課長(以下K) こちらこそ初めまして。ようこそお越しくださいました!

S 今日はちょっと緊張しています(笑)TVで観た方だー(笑)

K (笑)お陰様でいろいろ報道されていますが、まず簡単にうちの課の説明をさせていただきますね。

そもそもZ世代に地元就職してもらいたい…わけではない!

K よく言われる「若い世代の流出」が続いているんですが、若い人に選ばれる街にならなきゃいけないと言い続けていたけど、本気で取り組んでこれてたのか?っていうのがあり。そういう意思を表明する意味で、全国初のZ世代課を設置しました。

で、4月に設置して、平均年齢28.3歳っていう、役所では異常に若い部署になりまして(笑)。メディアにもすごい取り上げていただいて。なんでこんなに取り上げられたかって、名前のインパクトが大きかったからというのもあると思います。他の自治体さんでも、同じ主旨の部署はあるのですが、ぜんぜんメディアには取り上げられなくて。名前が違うだけでこうも扱いが違うのかと!名前って大事なんだなとすごく実感した出来事でした。ネーミングひとつだけでこれだけ全国に取り上げられたので、市長のネーミングセンスのお陰です(笑)

副編集長ニシヤマ(以下N) とにかくキャッチーですもんね。

K で、目的なんですけど、持続可能な街にするというのが目的でして。

よく勘違いされるのが、「Uターン移住」とか「若い人に地元企業に就職してもらいたい」とか、そういうことをやる課だと思われがちなんですけど、そこは目的にはしてません。

S え?そうなんですか??

K もちろん、結果的にそうなったらハッピーなんですけど、もうすでに取り組んでいる他の課があるし、同じことやってもしょうがないし。それよりも、もうちょっと長期的に街を観ています、我々。

どんどん変わりゆく価値観とか社会とかニーズとかの中で、その「変化の象徴=Z世代」と置いてます。そのZ世代や時代の変化に、ちゃんと役所とか企業さんとか街が対応できることで、北九州が稼ぎ続けられる街になって、いつまでも残る持続可能な街になることを目指しているんです。

なので、「若い人に学ぶ」っていうことをすごく大事にしていて、コンセプトにしています。

時代の変化を学んで色々な施策に反映していこうよ、ということなんです。

S なるほどー。

K 具体的に言うと、「➀次世代を育成すること」、「➁マーケティングに活かすこと」だと考えているんです。

➀次世代を育成すること

街を創るのってやっぱり人なので、若い人に限らず、いろんな方の人材育成を支援することは必要ですよね。

➁マーケティングに活かすこと

役所ってほんとにマーケティングが苦手なので(笑)、ちゃんと時代の変化に応じたものに変えていくために、私たちが色々その変化を感じ取るフロントの役割をやっているって感じです。だから、いかに他の部署から嫌われるかってことを目標にしています(笑)。他の部署が、若い人たちに事業を浸透させたい、って相談に来られるんですけど、「そもそもそれ何のためにやってるんですか」とか「それホントに要りますか」「そんなの若い人誰も見ませんよ」みたいなことを言うから、ムッとされて帰られてます(笑)

でも役所も街もそうやってアップデートしていかないと、もう時代に取り残されてしまうんで。持続可能っていうのは、やっぱり「変化に対応し続ける」ってことだと思うんですよ。人口も減ったり、 家族の形もどんどん変わっていくから、この辺は正確に学んでいきましょうねと。

S 確かに、そういう柔軟な姿勢って大事ですよねえ。

リアルなZ世代とは?新しい価値観をリードするZ世代の特徴

K で、ちょっとZ世代の特徴を調べたり、色んな方に話を聞いたりしたんです。これをZ世代の方に見せたら「自分に当てはまっててなんかイタイ」ってすごく言われます(笑)。

デジタルネイティブで、早いうちからSNSに親しんでいるから承認欲求はすごいんですけど、わかりやすく「いいね」の数がつくから、 目立ちたくないんですって。「褒められたいけど目立ちたくはない、だからこっそり褒めてほしい」、そんな感じらしいです。

N これって当てはまるの?

S (うんうんうん)当てはまります(笑)多ければ多い方がいい、ってことはわかるんですけど、明らかに数字に出てきてしまうと気が引けるというか。

K 自分に対する評価が変わるのがすごく嫌だ、そうですね。

あと、教育の影響かもしれないですけど、SDGsなどが浸透しているから言葉自体にはすごく敏感。けど、関心は高い一方でこういう(目立ちたくないという想い)があるから、行動に移すとなるとそれはまた別問題なんですよね。関心が高いから自分でやるか、っていうと、そこまではやらない。ワークショップ とかプレゼンまではみんなすごく前向きにやってくれるんですけど、じゃあそれを形にしましょう、となると途端にそこまでじゃないです、って感じで引いてしまうんですね。

Z世代の当事者も、大学の先生とかご支援されてる団体の方もみんな「そうそうそう」って(笑)。

S サタ、当てはまってます(汗)

N 言行不一致みたいな感じなんですかねえ?言ってる志とか考え方とかすごくいいのに、最後に行動に移せない?行動に移せないのは人の目が気になるから?

S すごい、すごいそう思いますね、うん。

K そんな感じみたいですね。デジタルネイティブだから、もちろんタイパは気にするし。

で、ワークライフバランスじゃなくて「ワークインライフ」という概念も持っています。

これまでのサラリーマンはあるべき仕事があって、それとプライベートをどう両立させるか、だったんですけど、「仕事も人生の一部でしょ」って考え方みたいです。なので、プライベートを犠牲にしてまで仕事しようとはあんまり思わない。人生って人それぞれだから、その中にある仕事のやり方も結局人それぞれ。だから、「仕事こうあるべきだ」とかみたいな昔の考えがもう一切通じないっていうのはその通りだなーと。

S 確かにその通りですよね。

K 以前、私より上の世代の方と兼業とか副業の話になったことがあって、「私もちょっとやりたいです」みたいなこと言ったら「これ以上忙しくしてどうすんの」みたいなこと言われて。でも忙しくするつもり一切ないんですよね。だからこれって今の話をすごく象徴してるなと思ったんです。仕事は時間内にきっちりやることはやるけど、副業って自分のためとか成長できることとか楽しいことのためにやるわけで。副業やるって、上の世代の方たちからすると「苦しいことの延長」っていうか「本業の延長」みたいに思ってるんですけど、それとは全然違う。なんなら副業やるために、本業を時間内にきっちり効率的に終わらせるし。だから、その辺の感覚って全然違うなっていうことをすごく感じました。

でも、X・Y世代とZ世代の方がキッチリ別れているわけじゃなくて、価値観は多分グラデーションで徐々に変わっていってるだけのはずなのに、いまいち両者の理解がなかなか進んでいないじゃないかな。間に立つような仕事なので、本当にやっぱり(世代によって感覚は)全然違うなって思うことが多くて。まあ面白かったりもするんですけどね。

S・N うんうん。なるほど!!分かる気がする(それぞれの世代として)。

実体験を重視、シン・ジダイ創造事業、次世代創造プログラム、区役所創造プロジェクトにかける思い

K そういう価値観を持っているZ世代の方々は、「実体験」が不足しているのではないかと思っています。苦手意識もあるし、実際に手足を動かして何かをする、ということが不十分じゃないかなと。デジタルネイティブだしコロナもあったし、他者と共同して色々やるっていうことがすごく苦手みたいだから、そういう経験もさせてあげたいなということで、この「シン・ジダイ創造事業」に取組んでいます。

まず「Z世代アイデアコンテスト」。意欲、行動力があれば、資金とサポートをご支援しますよ、というものです。これが1番目。

で、そのひとつ手前段階の、「やる気はあるけど行動力がなかなか持てない」という方(こちらがメインターゲットと思っていますが)に、みんなで最後までやってみようよ、というのが2番目の「次世代創造プログラム」。

最後に、北九州市っていうのはホントに広くて、エリアごとに課題とプレイヤーが全然違うんです。だから、一律で同じことをしても仕方がないので、それぞれ区役所ごとの課題に応じて、若い人の力で街を盛り上げてもらいたいっていうのが3番目の「区役所創造プロジェクト」です。

S 若い人たちが提案したものを、区役所ごとに?

K 区役所ごとに、なんです。若い方々が既にあるプロジェクトに参加する場合もあれば、若い方々がやりたいことを区役所とか自治会とか老人会を巻き込んでやろう、という場合も考えられますね。

例えば、空家率が増加しているエリアでは、それを活用して何かやりたい、とか。、高校も大学も学校が多いエリアでは、(通っている)学生たちの居場所がないっていう課題があるんで、区役所とか公共施設とか立派なものを活用して、ダンスで若者が集える居場所を作ろう、とか。

S おおー!面白―い!

K で、大事なのは伴走すること。これをしっかりやるというのがZ世代課の仕事だと思っています。

途中離脱しないように 頑張ろう頑張ろうって言い続ける。でも、ここが結構大変だったりする。若い方々に力を発揮してもらうために、伴走体制にもしっかり予算をつけたいんです。

で、次世代創造プログラムでは、「やる気はあるけど行動力がなかなか持てない方々」にワークショップをして、事業実施までを年度内にやる。

ただ、こういう取組って小倉中心になりがちで。

N あ、そうですね。なんかわかる(笑)

K なんで折尾でも絶対やりたい(笑)

せっかく大学がいっぱいあるし、「北九州市折尾まちづくり記念館」もできたし、駅もリニューアルしてきれいになったんで。小倉と折尾でやりたいなと。あと、意外とニーズがあるのが若手社会人

S プロジェクトを経験してもらう、みたいな?

K 企業の方が、若手の育成の機会が欲しいんですって。

新入社員は案外ひとりで孤独だったり、転勤とか配属でたまたま北九州市に来ただけで、友達もいなくて、昔みたいに飲み会がめちゃくちゃあるわけじゃないから繋がりがつくれなくて、だからそういう機会がほしいと。あと、やっぱり若手社員にいかに辞めないでいてもらえるかっていうのは、民間企業さんも結構悩みみたいですね。

N (・・・声には出さないが、企業人としては激しく同意)

K だから、こういうのに自分のとこの若手社員が参加して成長してほしいし、他社との繋がり作ってもらいたい、ってニーズがあることを聞くことが多いんです。

 

バラエティ豊かな若手の宝庫!Z世代課パートナーズ制度

K 「Z世代課パートナーズ制度」というのが5月末にできて、現時点(7月上旬)で30人を超える方にご応募いただきました!皆さんめちゃくちゃやる気が満ち満ちてて、北九州市、まだまだ捨てたものじゃないなってすごく感じてます(笑)。 役所のかたい会議に若い方を送り込んで、ちょっと風穴開けてもらったり(笑)、民間企業のプロジェクトなんかでも一緒に盛り上げたいなっていうのをこれからやろうとしていて。

参加してくれている子の事例なんですけど、両親バングラディッシュ人の、黒崎生まれ黒崎育ちの方がいて。

S・N おおお。

K 「黒崎の商店街はポテンシャルしかない」「そこをなんとかみんなに知ってもらいたい」って言ってて。そんな激アツな方がいたり。もう一人は東京大学の大学院に通っているんですけど。

S その時点でスーパー優秀(笑)

K 今、栄養疫学を学びに行ってて。で、北九州で恩返しがしたいと。北九州を健康の街にしたいと言っています。

S・N おおお(圧倒された感)。

K 秋から街づくりを学びにフィンランドに留学する方もいます。この方、、海外行っても街をみたら、「北九州だったらどう生かせるかなって、ついつい考えちゃうんです」っていう。なんでそんなに北九州市のこと想ってくれるの!(嬉)、って思えるバラエティ豊かな若い方々がいて。この人たちをいかに北九州の街づくりにつないで、変革の力にして行くか、が大切だと思っています。

N バラエティ豊かな若手が集まっているんですね!層が厚い!!これは将来が楽しみですね。

 

(つづきます。)

前編は、Z世代課の全体像をお届けしました。この時点ですでにワクワクがたくさんですよね!Z世代の方々はもちろん、全世代の北九州市民に伝わって欲しい!後編をご期待ください。

Z世代編集長が探る!世代を考えること ≒ 北九州を考えること? -後編-:記事はコチラ