北九州市立大学の地域創生学群には、2000年代生まれの若者たちが集まり、新たな価値観をリードする「ソーシャルネイティブ世代」が中心を担っています。

この世代は世界的にも人口が増加しており、未来の消費や文化を担う重要な存在として注目されています。

地域創生学群の学生たちは、単なる年齢や世代の枠を超えて、多様な価値観を持ちながら地域社会に貢献し、次世代の新しい基準を生み出す力を持っています。彼らの活躍は地域の未来を形作る上で欠かせない要素です。

そこで今回は、地域創生学群の学生たちをより深く理解するための「チソウのトリセツ」をご紹介します。彼らの考え方や行動パターン、価値観の背景にあるものを探り、地域に役立つ取り組みを共に考え、より良い未来を創るためのヒントをお届けします。

副編集長が行く!伝える伝わる、あなたとわたし チソウスピリッツは「生きる力」? -後編-記事はコチラ

0. 今までの枠組みを超えた、地域とのむすびつきから得られる学び

副編集長ニシヤマけいおん(以下N) 今日はどうぞ宜しくお願いします!

2年生園田さん(以下S)、2年生三坂さん(以下M)、矢ヶ井先生(以下Y) 宜しくお願いします。

N 前回の取材【北九州愛が詰まったサンドウィッチで地域活性化!学生と銀行、ギラヴァンツ北九州のコラボ企画:記事はコチラのご縁で、今日のこの時間が実現しました。地域創生学群(以下、地創)については、その記事でも少しだけ触れていますが、改めて「学群」ってどういう意味があるんですか?

S そうですね、よく聞かれますが(笑)、経済学部とか法学部とか、専門的な学問の分野だけでなく、地域とのむすびつきで得られること、社会課題として認識されていることなどの分野を総合的に捉える学び、といったところでしょうか。既存の学問の枠組みを超えて、実践的で社会的な要素もあって・・・むずかしいですね(笑)

N たしかに、既存の考え方だけで捉えようとすると、ん?ってなる(笑)たしか地創って設立されて15年ぐらい経っていると思うのですが、本当に世の中がすごい変わってきていて、今ある固定観念が通じなくなってきている感じはしますね。そう考えると、15年ぐらい前にこの学部を作ろうとした北九州市はスゴイ(笑)

M ホントそうですね(笑)履修の形も少し変わっていて、1~2年生は「実習」という形で履修していくんです。「授業を受ける」という感じは全然なくて、いきなり地域に放り込まれる感じです(笑)その中で何が出来るかを考えていく、っていう、いきなり実践のスタイルです。

そして2~4年はゼミに入り、実習等で学んできた実践活動に学術的な要素もゼミで身に付けることで、より学びを深めるようなカリキュラムになっています。また3年生後半からは卒論テーマを設定して研究し、論文を制作して卒業という流れです。

N いきなり実践って(笑)3~4年生で卒論に向けた活動になっていくのは何となく分かりますが、1~2年の時から「実習」が始まっていくんですね。「実習」っていくつもあるんですか?選ぶことはできますか?

S 今は私たち「広報実習」を含めた13の実習があります。希望は2つまで出すことができて、入学後、4月から実習がスタートします。2年生が中心となって、1年生を育成しながら成果を出していく、という感じですね。

0. キーワードは、広報実習。学生じゃないと伝えられないリアリティ

N なるほどー。皆さんは自分の価値観とか、将来なりたいものとかに照らして実習を選んでいくんですね。で、その中にお二人の「広報実習」もあるんですね。ちなみに、実習は元々学校側が用意したのですか?

Y 広報実習は地域創生学群が設立された頃からある、けっこう古い実習なんです。というのも、地域や教員の声から、学群や実習のことを学生が自分たち自身で発信すること自体が、大きな学びになるのでは、という意見があったんです。地域創生学群の学びを教員が発信しても、「別に先生たち自身が地創で育ってきたわけじゃないよね」っていう意見もあって。ある意味、教員だと(説得力に)欠ける部分があるというか、やっぱり学生じゃないとリアルに伝えられない。学生が高校生や地域に対して発信する重要性をいち早く感じ取った背景があって、こういう実習を作ることになったんです。

N うーん、確かに、新しい枠組み(の学部)だからこそ、リアリティは学生じゃないと伝えられないかも。

Y 学部とか大学の広報ってやっぱり教職員中心なんですよね。最近は少しずつ学生の参画が増えてきてるんですけど、教職員だけで高校生に模擬授業をするスタイルもまだまだ多いですね。

N 学群として(活動を知ってもらうための)広報の機能はあったらいいよねっていうのと、広報の主体が学生自身の方が伝わりやすいんじゃないか、という背景があったんですね。どうやって伝える?を考えることを通して、そこから学びを得てほしいっていう。この学群の生徒にとって、日常全部が学びのフィールドみたいな感じなんでしょうね。

0. スゴイ、憧れ、魅せる力。なりたい自分の具体的なビジョンを描くために

N では、お二人はもともと広報に関心があったんですか?

S めちゃくちゃ広報活動をしたい、というより、高校3年生の時参加したオープンキャンパスにグループワークというのがあって、そのワークの司会進行している先輩たちの姿が「スゴイな」って思って、憧れを抱いたんです。それ以外にも、その企画運営を広報実習が担っていることも知って。(私自身、そういう経験が)入学するきっかけになったので、次は自分が高校生たちにそういうきっかけとか機会を与えることができたらいいな、と思っています。

N なんてキラキラなエピソード(笑)

その先輩たちがあなたに無いものを持っていたから「スゴイ」って思ったんだと想像するんですが、「どういうところがスゴイ」なと思ったんですか?

S 「魅せる力」ですかねえ。

一応、志望校として考えていたので、オープンキャンパスに行くと緊張していたんですけど、その先輩たちの、司会の中の言葉であったりとか、ワークの中で演技をしながら私たちの緊張もほぐしてくれたりとか、プラス、高校生同士のコミュニケーションが円滑に図るファシリテーションとか、そういう設計や実行力がスゴイと思ったんです。

N おお、なるほど!

そういう企画力やファシリテーション力って、先生方がある程度用意して学生さんたちに伝えていっているのですか?それとも学生さんが自発的にどこからか習得してきているものなんですか?

Y 両方あると思いますね。私たちは一応教員として付いてはいるんですけど、あんまり「教える」っていう感じではなく「一緒に考える」っていうか。教員の専門性とか経験から見てのアイデアもある一方、学生側から見てのアイデアもあるはずだから、二つの視点を融合させながら実習を進めている、という感覚が近いかなと思うんだけど・・・(生徒2人の方を見て)合ってます?

一同(笑)

N 先生が答え求めてますやん(笑)。

三坂さんはどういうきっかけで広報実習を選んだんですか?

M 私は希望のうちの1つがここ(広報実習)だったんですが、広報って言ったら媒体・SNSWebサイト・編集、っていうイメージで、自分のデザイン力とか発信力とか、そういう部分を伸ばしたいなという想いが強かったので、この実習に入って伸ばせたらいいなと思っていました。

N メディアとかクリエイティブなものを作るっていうことに関心があったんですね。

M そうですね。Webとかチラシとか、そういう広報戦略的な部分で使えていけたらいいなと。

0. ソーシャルネイティブ世代が、あえての紙メディア「地創新聞」

N 地域創生学群の13個ある実習の中に「広報実習」があって、残り12の実習や地域創生学群の全体のことを知ってもらう活動をしている、ということですね。具体的にされていることは、まずこの「地創図鑑」。会社でいう企業パンフレットみたいなものですね。後はWebサイトやSNSを展開していて、この度5月から「地創新聞」というあえての紙メディアをリリースされました。どの媒体でどんな発信をしよう、という全体的な設計も皆さんで考えているんですか?

M そうですね、一緒に考えていて、それぞれの媒体に対してどういう目的、目標で、どういう人向けにするかなどを洗い出して取り組んでいますね。

0. 地域創生学群の学びをアップデート、リアルの発信、ポジティブ、メリハリ。

N 皆さんがその地層のことを伝える上で、難しいなって思っていることはどんなことですか?

M 私は地域創生学群で学べることをリアルに発信するのが難しいって感じていて。

N 学べることをリアルに発信するのが難しい?

M そうですね。広報実習で学生が発信する魅力って、私たち自身が学んでるからこそ発信できることなんですけど、その分、ウェブなら文章になったりとか、インスタだったらリール動画やストーリーや投稿文章だったりとか、その秒数、文字数の中でリアル感を表現する難しさです。

ちょうど7月にオープンキャンパスがあったんですけど、その時は本当に痛感して。さっきグループワークの話がありましたが、今回は私がそのグループワークの原稿だったりパワーポイントとか内容を考えたんです。学群で学べることを高校生に限られた時間の中でどうやって伝えていくか、しかも高校生のレベルに合わせて伝えていくにはどうすればいいのかを考えるのが本当に難しかったです。でも、学びにもなりましたけどね。

N なるほど、確かに。地層の取り組みを言葉で言うのは難しいのに、それを140文字とか、制限がある中で「芯を捉えた表現」をするのって難しいでしょうね。

S 私も近しいものがあって、言語化するというか、他者に伝える・表現にするっていうか、今までそういうことを習ってこなかったというのもあるんですけど、そういうライティングスキルが難しいなって思いましたね。

あと、「地創ならではの魅力」を伝える難しさもあるなと思っていて。

この学群に特殊なことであっても、当たり前になるというか。他の学校がやってない魅力に気付けないというか。他の学校のことを知らないと地創ならではの魅力が見えてこないんで、他の学校のことを知るってことも大事だなって思います。

N うわー、「自分にとっての当たり前を疑う」って難しいですよね。元々、地創の取り組みって多岐に渡っているし、そもそも「明確に言語化して伝える」こと自体がとても難しいですしね。人間には言葉があるけど、やっぱりリテラシーには個人差があります。冷静に考えれば、これはなかなか重たいことかもしれません。

そんな中、学生のみなさんが「あえての紙媒体」を選ばれたことには、オジサン世代にはちょっと親近感でもあります(笑)幅広い層に届けたい、という想いを想像しますが、うん、たしかに届きやすいと思いますよ(笑)

(つづきます。)

副編集長が行く!伝える伝わる、あなたとわたし チソウスピリッツは「生きる力」? -後編-記事はコチラ

地域創生学群webサイト:https://sousei.kitakyu-u.ac.jp/overview/curriculum/position/

伝えたくてもうまく伝わらない、こういったジレンマを、地創で学ぶ二人はどう捉えているのでしょうか。次回、後編はいよいよその核心が語られます。