北九州市八幡西区の住宅街にある民泊施設「YADOYA蓮來(はく)」。

自宅敷地内のアパートを改装し、ご夫婦で運営するこの宿には、海外からの団体旅行者や地元のママ友グループまで、幅広いゲストが訪れています。

一方で、地域の不動産大手・大英産業株式会社も新規事業として宿泊施設を展開。効率的な運営体制と多様な顧客対応で、グループやファミリー層の需要に応えています。

同じ「民泊」でも、個人と企業では運営方法やゲストとの向き合い方が大きく異なります。

今回は特別企画として、個人経営と企業運営、それぞれの立場から民泊をどう捉え、どんな未来を描いているのかを深掘り。実際の体験談からデジタル活用、地域とのつながりまで、本音で語っていただきました。

田北真由美さん、田北順一さんご夫婦

北九州市八幡西区にて、自宅敷地内のアパートを改装した民泊施設「YADOYA蓮來(はく)」を、2025年より運営

桂竜平さん
不動産会社 大英産業㈱ 新規事業開発部にて宿泊施設の企画運営を担当

【1】国際ゲスト受け入れの実体験と工夫
浴衣で花火大会へ!インドネシア団体の滞在エピソード

司会(以下、司):以前お会いしたのは営業開始前でしたね。あれから数か月経ちました。実際に営業がスタートし、今はどういう状況ですか?

田北真由美さん(以下、真):Tシャツ作らないけん(笑)

司:いきなりTシャツ(笑)たしかに、海外の方にお会いする時いいかもですね。

真:昨日までインドネシアの団体さんがいらしたんです。日本の浴衣を着て記念写真を撮って行かれたんですよ。大学生と講師で10数名、小学校にインドネシアの文化を伝えに来た、って。

司:おぉ、市とか学校の関係の方々なんですかね?

真:詳しいことは分からないけど、最初はちょっと怪しいかな?とか思ったりしました(笑)なんかあっても怖いし、最初はお断りしたんですけど、1週間ぐらい経ってまた連絡があって、やっぱり泊まるところがないからお願いします、って言われて。

司:たしかに、15人も入れるところはあんまりないですもんね。その点、ここのお宿はもともとアパートですし。

真:来られるとなったら夫婦で「どうしよう!」ってなって(笑)インドネシア語わからんし、DM送っても、日本語が分からないのか、ちゃんとした返事が来なくて。宗教的なこともあるから、準備もいろいろあるだろうけど・・・そんな時に知り合いの高校の先生に相談したら、「私、インドネシア人の親を持つ生徒を知ってるから紹介するね!」って言ってくれて。

司:えぇ!?そんなことあるんですか!??(笑)

真:その子が来てくれて、全部説明してくれました。イスラム教なので、お祈りの時間も配慮しました。個人でやっているので、そういう勉強もしなきゃいけないですね。

田北順一さん(以下、順):みんな明るくて、インスタでつながったり、すごく楽しく過ごしてくれましたよ。

真:帰りもいろんなところに送っていきました。車で送迎したり、小倉駅のロッカーが全部埋まっていて、荷物が多かったので迎えに行ったり。

順:みんなで浴衣を着て花火大会に行ったり、記念写真を撮ったり、すごくいい思い出になりました。

真:浴衣のレンタルもしましたよ。女の人用はうちにあるものを選んでもらいましたね。隣に住んでいるお姉ちゃんが着付けできるので、バイトで来てもらって、みんなでワイワイしながら着付けしました。 

司会:国際交流的な面もあるんですね。 

真:本当にそう思います。個人だからこそ、送迎や細かいサービスもできるし、荷物運びも全部自分たちでやりました。みんな「マミさん、ありがとう」と言ってくれて、私のインスタのフォローもしてくれましたよ。 

順:これがその時の写真です。みんなで記念写真を撮ったりして、すごくいい思い出になりましたよ。

インドネシアからのお客様はとにかく明るくてフレンドリー、お別れの時はカタコトの日本語で「マミさん!ありがとう!」を連発、感動的なご挨拶をいただいたそう

司:(ちょっと感動)今は海外からのお客様も多いですし、国際交流もホント身近になりましたね。こちらのお宿でもやっぱり海外からの問合せは増えているんですか?

真:78月は多かったですね。ある国のご家族が、(近くにある)産業医科大学で治療を受けるために3週間泊まられました。帰るときにまた来たい、って言ってくれて。サイトを利用すると手数料が高いから、現金で払うってまで言ってくれて(笑)日本円を準備するのが大変だったみたいです。

帰られる前にご飯に誘ってくれて、お父さんが自分の仕事のこと、アフリカやアメリカに行った時のことを話してくれました。

司:す、すごい方だったんですね。

真:お父さんもすごく喜んでくれて、LINEやInstagramが使えないとのことで、wechatで連絡を取ることにしました。

順:フランス人のお父さんと中国人のお母さんの家族も来られました。子どもたちが「こんにちは」と日本語で挨拶してくれて、みんなで庭で遊んだりして。「ここ最高!」って言ってくれましたよ。 

真:もちろん日本人お客様も来られます。サッカーチームの子どもたちが泊まりに来てくれました。大雨で試合が中止になったけど、庭で喜んで遊んでくれましたよ。「また来るね」って言ってくれました。

順:庭がある宿は珍しいみたいで、みんなすごく寛いでくれます。洗濯物を干してあげたり、雨が降ったら取り込んであげたり、そういう気遣いも喜ばれます。 

真:SNSでつながったゲストがまた来てくれたり、写真を撮ってインスタに載せてもいいか聞くと、みんな快くOKしてくれます。今まで「ダメ」と言われたことはないですね。

司:口コミやリピーターが多いのは、そういう細やかな対応があるからなんですね。

【2】デジタル時代の民泊運営:AISNS・翻訳アプリの活用
ChatGPTも活躍!?民泊オーナーのデジタル活用法

司:SNSAIなんかのデジタルツールも覚えなきゃなんですね。

真:私たちは、デジタルツールがないと無理ですね(汗) chatGPTは先生みたいなものです。AIYouTubeSNSGoogle翻訳、wechatなどを使っています。翻訳はGoogle翻訳が一番使いやすいかな?インスタの投稿も孫に教えてもらいながらやっていますよ(笑)。最初はインスタを投稿するのに1日かかりましたが、少しずつ慣れてきました。 

司:企業側は言語については、デジタルツールを使いますか? 

桂:ゲストから問い合わせがあったら対応することはあります。トラブルだったら社員が現場に行きますけど(笑)でも、やっぱり英語が話せる方がいいですよね(笑)

真:英語は中学英語でなんとかなるし、韓国や台湾の方も英語でやりとりしていますよ。 

順:デジタルツールは便利だけど、やっぱり最後は人の対応が大事だと思います。

【3】個人経営は対面・コミュニケーションが大事
庭でBBQや子どもたちの遊び場、心に残る体験

司:そうですよね!AIやデジタルを使っても、最終的には対面の温かさが大事ですね。 

真:これまでいろいろな国のお客様との中で、やっぱり「世界のママ」みたいに親しみやすさや温かさが評価されていると思っています。韓国や中国のゲストからも「お母さんみたい」と言われますし(笑)。そこから、口コミやリピーター、紹介が大きいです。SNSでつながったり、ゲストがまた来てくれたりします。 

Airbnbでの評価は5点満点中の5点!

順:個人だからこそ、送迎や細かいサービスもできるし、困ったときにすぐ来てくれる人がいるのは心強いですからね。

桂:個人経営の方は対面での満足度が高いので、口コミも多いですよね。うちは複数施設を運営していて、主にグループやファミリー層がターゲットです。無人運営で効率化を重視していますが、日本に来て日本人と話したいという方も多いので、対面サービスの価値は高いと思います。

順:庭でみんなでバーベキューをしたり、子どもたちが走り回ったり、そういう体験ができるのも個人経営ならではだと思っていますね。

真:笑顔で伝わることが多いです。言葉が通じなくても、身振り手振りや笑顔でなんとかなることが多いです(笑)

司:国が違ってもぜんぜん関係ないんですね。 

真:本当にそう!みんな日本語を一生懸命話そうとしてくれるし、こちらもできるだけ相手の文化や習慣を尊重するようにしています。笑顔で伝わることが多いですね。

司:(うわっ、名言出た!!)

お子さまが遊べるスペースやおもちゃもご用意、小さなお子様連れでも安心してくつろげます。

【4】地域で広がる民泊・宿泊業の今とこれから
空き家活用の増加と価格競争の現実

司会:地域の民泊や宿泊業の現状について、どのように感じていますか? 

真:空き家を活用した新しいゲストハウスも増えてきました。競合も増えてきて、価格競争もありますねえ。 

桂:(不動産会社目線では)需要は高まっていると思います。JR折尾駅前の再開発などで、今後さらに集客が増えるのではと期待しています。 

順:最近は値段も下げざるを得ないこともあるようです。口コミや紹介で差別化できていると嬉しいのですが(苦笑)。 

桂:うちも価格は安めですが、外国人のお客様には物価的に高く感じないようですね。お金持ってるみたいです(笑)ファミリーやグループ向けの集客を強化していきたいと思っています。 

【5】これからの民泊運営に向けて
個人経営は「楽しさ」と「地域とのつながり」を重視

司会:今後の課題や期待について教えてください。 

真:自分たちでやる楽しさや、地域とのつながりを大切にしながら、もっと多くの人に来てもらいたいですね。 

順:掃除や施設管理、庭の手入れなど全部自分たちでやっています。大変だけど、自分たちのためにやるので楽しいですよ。大変だけど(笑) 

真:困ったときにすぐ来てくれる大工さんや近所の人がいるのも心強いですね!人との繋がりのありがたさも感じています(詳しくは前回の記事を参照)

桂:企業としては、効率化や多様な顧客対応を進めつつ、地域の活性化にも貢献できればと思っています。 他の企業だけでなく、学校とか行政とか、これからはそうやって地域がつながっていく時代になっていくんだと思います。

司会:本日は本当に感動的なお話や、未来のお話など、貴重で幅広いお話を聞かせて頂きました。みなさま本当にありがとうございました!

建築端材を再利用して作られた部屋のネームプレート

有段者のお孫さんが書いた毛筆をレーザープリンタで刻印したもの
(協力:digiCraft 田中雅巳様 https://www.instagram.com/digi_craft_3d/ ㈱大英工務店 https://daieikoumuten.com/

YADOYA 蓮來(はく)
場所:〒807-0863 福岡県北九州市八幡西区大膳1丁目3−9
公式instagram:@haku_.5
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ご予約:TEL 090-2963-9036

大英産業株式会社
https://www.daieisangyo.co.jp/

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