黒崎のレストランバー、グリーンルーム。何やら月1回の映画上映会を始める!とのことで、テスト上映会に呼んでいただきました。

バーで誰かと見る映画、いかがですか?

スパイスカレーのタカミカリィでもご紹介した事のあるグリーンルーム

[コチラもご参考にhttps://iko-sumo.jp/greenroom_takamicurry/

月1回の音楽ライブ、不定期に開かれる展示会や店内装飾、イベント的にオープンするスパイスカレー屋など、話題に事欠かないお店。いつも感性を刺激してくれます。

「映画館の無くなったこの街で、映画を楽しめる環境が作れるといいな」

いつも、マスターのゆるやかなささやきからはじまります。

映画館以外の有料での映画上映って縛りがあって…。

そんな中、出会ったのがpopcorn(ポップコーン)という映画配給システム

飲食店や貸し会議室など、プロジェクターや音響の設備があれば、何人からでも上映会ができるというもの。

マスターよりご挨拶〜popcornサイトより

北九州市の副都心・黒崎駅より徒歩5分。旧長崎街道沿い、繁華街のはしっこ。普段はレストランバーとして営業しながら、jazz liveやshop in shop、緑化計画等のイベントを開催しています。映画館の無くなってしまった街・黒崎にマイクロシアターという形の楽しみ、共有体験、映画館から外に出た時のなんとも言えない気持ち…バーだから出来る寛いだコミュニケーションを、映画を通して広げて行ければと思います。

上映作品は様々。今回はドキュメンタリー「トントンギコギコ図工の時間」

監督:野中真理子

東京・品川のごく普通の公立小学校に通う子どもたち。学校に通って、友達と遊んで、塾に行って、ケンカして…、そんな毎日の中に、週に一度楽しい図工の時間がある。タダモノでない雰囲気の図工専科のウチノ先生と一緒に、子どもたちは夢中でモノをつくる。それはキラキラ輝く宝の時間。

今回の映画のお供は手作りのポップコーン。

バーカウンターからドリンクを出してくれます。この雰囲気だと、コーラよりビールが飲みたくなります。もちろんお酒もどうぞ。上映中のおかわりもどうぞ。

いつものように置かれた客席。どこで見るかも気分次第。気に入った椅子に腰を下ろし、心地の良い角度を自分で整えます。視界に入る装飾、空調に揺れる風鈴、冷蔵庫の音、ここにしかない空間は、劇場でも家でもない趣きがあります。

開始ブザーや予告は無いものの、照明が落とされ定刻に開始。

薄暗いライトの中では、スクリーンを見つめている人の動きや表情がわかります。

気になるシーンで隣の人と交わすアイコンタクト、ほんの少しの会話、笑い声、氷が溶けてカランという音。視界に入る人や物、音、これが案外心地良い。暗闇と静寂の映画館が非日常だとすると、日常の延長線上な感覚。

上映後、自然にお客さん同士で会話が始まった。

司会者や仕切り役のいるトークタイムなどではなく、とても自然にとてもゆるやかに。

見終わった後は、そそくさと退出する人はおらず、のんびり座ったままだったり、もう1杯お酒を頼んでいたりもしました。バーだから起こるこの余韻がたまらない。

この日は作品の監督のご友人が参加されていて、北九州に引っ越してきたばかりで土地勘もなく、街のこともあまり知らないけど、監督自らのお知らせがあり来てみたとのこと。接点がなかった街で、これこそ映画がつないでくれる出会いを目の当たりにし、特別な上映会になりました。

作品はドキュメンタリーや味のある映画からセレクト

今回のイベンターは、店の常連さんで映画好き。

普段バーに縁遠い人達が映画で集まり、そこで生まれる時間が楽しみ。街の映画館で映画を見ていた世代でもあり、あの頃の体験を自分がこれからも住み続ける街で少しでも残していけたら。

夏休みにちびっこも見られる映画を上映して、世代で反応の違いを感じたり、感想を話し合うのも新しい視点に出会えてきっと楽しい。と話してくれました。

今後の上映作品も、参加者との会話の中から選んでいくような会にしたい

賛同してくれる方がいれば、参加者同士で上映作品を決めたり、イベンターとしての参加もできるような、ゆるやかなコミュニティを目指しているそうです。

上映後に、普段見ない映画を誰かのセレクトで見るのは気持ちいい、ドキュメンタリーをみんなで見るのもいいねと盛り上がっていたので、今後も個性的な独自のセレクトが行われるのではないかと楽しみです。

作品を目的に映画館へ行くというスタイルから、グリーンルームに行くと新しい映画に出会える。そんな日常を過ごせる機会になりそう

月1回の上映会を予定しているがあくまでも不定期開催なので、情報はInstagramでチェックをお願いします。

独自のサイトから申し込むなど参加方法にも手順があるので、こちらからご確認を。

Instagram:greenroom_masaki

今後は映画と食事や、映画となにかでコラボ上映もありそう。映画を見た後の隣の人との会話、扉を出て感じる街なかならではの景色と空気、グリーンルームだからこそできる鑑賞体験が楽しみです。

日本の映画館の繁栄は昭和30年代。

「娯楽の王様」と言われ、人々は街へ出てスクリーンで映画を楽しんでいました。

この頃、日本全国に約7000館を超える映画館があったそうです。その後、東京オリンピックの開催などで家庭にテレビが普及し、娯楽は変化していきました。ビデオやテレビ放送で見られる映画作品も増え、街の映画館は縮小化。平成に入ってからは、徐々にシネマコンプレックスが主流となり、街なかにいくつもあった映画館は次々に閉館していきました。ミニシアターブームと呼ばれながら、良質な作品を流す地域に密着した映画館は残るものの、今や少し待てば映画も配信され小さな画面で持ち運ぶ時代へも変化しています。

入れ替え制が無く、途中から入ったら次の上映の途中まで見て映画館を出たり、座席指定なんて無いので、見たければ長蛇の列を作るのが基本。混雑していたら立ち見という、昔ながらの映画館の風景は完全に消滅しました。

ぎゅうぎゅうの映画館で、立ち見の大人たちをかき分け、座席の横の通路に小さく座り込み見た最後の思い出は、もののけ姫。青春の思い出です。20数年前までこの街にあった日常とそこでの恍惚感を思い出しました。あの時代を知っている人達には、映画の前後にあるなんともいえない時間を大切にしてほしいし、当時を知らない若者たちには街に溢れるカルチャーと高揚感みたいなものを感じてほしいなと思う体験でした。